祖父が死んだ
祖父が死んだ。
97歳だった。
大人になってからは祖父への親愛の情よりも、
当たり前に押し付けられるドメスティックな労働により人生を奪われている母をもう解放してあげてほしいという気持ちが大きくなっていたし、
老衰で眠るように死んだということもあり、祖父の死にあまり悲しみは感じなかった。
死ぬ少し前、もう流動食しか食べられなくなっていた祖父に私は味噌汁を持っていった。
祖父は味噌汁を少し飲み、
タマスカちゃんが作ったのか
と言い、
そうだよと答えると、
うまい、と、言った。
今日味噌汁を作っていたらそれを思い出した。
悲しくないと思っていたはずなのに、
泣けて泣けて仕方なかった。
私が作るご飯をいつも「味が良いや」と食べてくれた祖父、
マラソンが速かった私に「タマスカちゃんは体重が軽いから速いんだ」と祖母が言ったら、
「心だって強くなきゃ速く走れない」と言ってくれた祖父、
戦争を生き延びた祖父、
5人の子供をもうけ、その内の一人を亡くし、
12人の孫が生まれ、その内の一人を喪い、
17人のひ孫が生まれた祖父。
見送って、見届けて、見送られる。
泣いても笑っても朝が来てまた夜が来て、
人生は続いていく。