世の中コロナ一色だ
そんな中でも父(70)は町会の会合に行く。
「人数を8人に減らした」し、「会計監査だから行かねばならぬ」らしい。
喫煙者の老人のくせに危機感が足りないと思う。
だが私はいい年こいてお小遣いをもらっているし父はシンプルにおそろしいので「換気してね」としか言えなかった。
父の自転車を破壊し携帯電話を浴槽に沈め玄関に板を打ち付けるべきだった。
盆踊りの寄付の伊予柑を買う話をするために老いぼれ共が集まっている場合ではないのだ。
学生時代の私なら、こんなに新型コロナウイルスを恐れなかっただろう。
それは単に自分は若いからとかそういうのではなくて(そういうのもあるだろうけど)守るものがなかったから。
子供が生まれてからの私は弱くなった。
すごくすごく強くもなったが、とてもとても弱くなった。
子供を失うことがこわくてこわくて気が狂いそう。
神様どうか子供達を私より先に死なせないでください。
親の願いなんて究極それだけなのだろう。
血塗れの、ほかほかと暖かい、湯気がたつようになまぐさい、小さな我が子をこの手で抱くまで、
こんなにも純度の高い祈りを私は知らなかった。